川柳文化祭誌上大会(令和2年)
『昔』 真島久美子 選 | ||
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駕籠舁きの頃はきれいな松並木 | 佐野由利子 | |
浦島のことは隠居の亀に聞く | 山田こいし | |
ばあさんの昔語りは怖いなあ | 落合 正子 | |
こっそりと森に落としてきた昔 | 山口 亮栄 | |
昔昔匿名の花束が届く | 青木 公輔 | |
昔追い越しだるまさんがころんだ | やまぐち珠美 | |
唐突に思うあの日のビスケット | 伊東 マコ | |
桃はまだ割れず話は始まらず | こはらとしこ |
『恵む』 和泉あかり 選 | ||
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水遣りへアンパンマンの心意気 | 木下 種子 | |
恵まれた価値を死守する千枚田 | 来本 芳子 | |
大切な子に大切にされている | 栁谷 益弘 | |
歯が丈夫日本を全部食べ尽くす | 馬場はるか | |
御上より下され給う布マスク | 中尾 憲子 | |
餓死しない内に届いた給付金 | 佐瀬 貴子 | |
タワービル月の微笑に恵まれる | 牧内 摩季 | |
恵まれた席で耳から老いぼれる | 山口 早苗 |
『もてなす』 伊藤 我流 選 | ||
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一人きりにしてくれるのもおもてなし | 佐道 正 | |
さりげない気配りあって心地良い | 川畑 博則 | |
肉じゃがで男一匹絡めとる | 竹内竹ノ花 | |
空からの客をもてなす富士の山 | 林 博之 | |
柔らかい未来を語るさくら餅 | 芝岡かんえもん | |
おもてなし笑顔に勝るものはない | 森崎 清三 | |
拳骨のようなおはぎが待つ帰郷 | 栗林むつみ | |
陽の匂う布団でゆるりしてと言う | 小林ふく子 |
『破る』 堀江 加代 選 | ||
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青空を破りミサイル飛んでくる | 馬渡 静子 | |
異次元の風が慣例突き破る | 大戸 和興 | |
痛勤のスタイル破るテレワーク | 南川 哲夫 | |
しゃんしゃんの期待を破る意義の挙手 | 中島 道夫 | |
三密を守れず生んだクラスター | 田中まこと | |
コロナ禍がライフスタイル覆えす | 増田 幸一 | |
人間のルールをにんげんが破る | 平井 翔子 | |
慣例を破るリモート入社式 | 岡村水無月 |
『譲る』 荻原 鹿声 選 | ||
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ドナーカードわたし一人でない体 | 後藤 洋子 | |
過去なんか全部上げるわ明日がある | 加藤ゆみ子 | |
子に譲る方程式のないノート | 馬渡 洋子 | |
バラの香も刺も残して座を譲る | 藤井 保子 | |
青空を一枚剥がし譲ります | 芝岡かんえもん | |
勝ち取った譲歩天秤揺れ止まぬ | 真島久美子 | |
禅譲をしても鵜匠の位置にいる | 西山 竹里 | |
魂を譲る時間がまだ足りず | 大前 安子 |
『寄る』 上村 脩 選 | ||
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傘二つ寄って濡れてもいい一つ | こはらとしこ | |
かあさんの海馬に白い鳥が寄る | 加藤ゆみ子 | |
懐の広い人です人が寄る | 瀬戸れい子 | |
通じ合う何かがあって半歩右 | 真島久美子 | |
人望の問わず語りへ和と話の輪 | 新谷みのり | |
鏡ふく少女に潮が満ちてくる | 倉永みちよ | |
寄り添って生きる明日が見えるまで | 大野 征子 | |
老年期平行線も歩み寄る | 高良 秀光 |
『ラッキー』 中西 隆雄 選 | ||
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陥落を危うく止める不戦勝 | 中島 道夫 | |
耐えに耐えラッキーセブンものにする | 森 ひろし | |
八十路来て一期一会の友がいる | 保坂 三蔵 | |
末席にあった残りの福の神 | 角屋 教子 | |
数々の試練は神のプレゼント | 伊東 マコ | |
戦争も飢えも知らずに喜寿迎え | 谷口 春美 | |
天性の明るさ福を招き寄せ | 宮坂 芳子 | |
広大な宇宙の隅で君に逢う | 加藤ゆみ子 |