川柳文化祭1部(平成22年11月)
『蹴る』 田中八洲志選 | ||
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進学の夢を拒否する低所得 | 篠原智恵子 | |
捨て扶持を蹴りサムライの顔になる | 上村 脩 | |
蹴鞠かも知れぬぞサッカーのルーツ | 安藤 紀楽 | |
一票の恩を忘れたマニフエスト | 森崎 清三 | |
耐性菌ヒト科のエゴへキックオフ | 布施 ちえ | |
逆転のロングシュートが神になる | 原 光生 | |
蹴落とした先でライバル仁王立ち | 井上 東風 | |
黄金の足から億を叩き出す | 秋山 茂子 |
『子ども』 石川とく江選 | ||
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子はいつか親の遮断機超えてゆき | 西潟賢一郎 | |
母さんの死角が好きな反抗期 | 岩瀬 恵子 | |
ページ毎夢が膨らむ母子手帳 | 川名 信政 | |
いたいけな命は親を選べない | 秋山 茂子 | |
少子化の子等は神の子お国の子 | 米島 暁子 | |
真っ青な空を子供は画布にする | 篠田 東星 | |
宝にも重荷にもなる子を育て | 森崎 清三 | |
逆境に育ちガッツな風になる | 遠藤砂都市 |
『竿』 篠田 東星選 | ||
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戯画一つ竿に吊して酒に酔う | 潮田 春雄 | |
日の丸を結ぶと生きた竿になる | 西潟賢一郎 | |
偽善者の仮面が竿に干しきれぬ | 廣島 英一 | |
赤ちゃんがいるよと竿が誇らしげ | 加藤ゆみ子 | |
竿磨くたびに釣果を太らせる | 上村 脩 | |
旗竿に乗ると日の丸上機嫌 | 潮田 春雄 | |
ペテン師の竿が疑似餌をおどらせる | 岡部 美雄 | |
燃え尽きるまで旗竿を振る正義 | 篠崎 紀子 |
『辛抱』 阿部 勲選 | ||
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石の上三年時に置いてかれ | 河合 成近 | |
初心者の指導忍耐強くなる | 小山しげ幸 | |
蒸発をしたい日もあるマスオさん | 安藤 紀楽 | |
九条が喧嘩は駄目と言っている | 小倉 利江 | |
国会の喜劇笑いを我慢する | 森崎 清三 | |
平成のおしん不況が飼育する | 小倉 利江 | |
老いの樹の細さ弱さを飼い馴らす | 小林 良恵 | |
座禅終え五欲がどっと沸いて出る | 廣島 英一 |
『澄む』 米島 暁子選 | ||
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満天の星にロマンが澄み渡る | 篠崎 紀子 | |
森へ来て透明感を吸い上げる | 潮田 春雄 | |
ライバルの澄んだ瞳に救われる | 藤 あかね | |
よく澄んだ乳房を含む天使の瞳 | 岡部 美雄 | |
澄んだ目で写経の筆へ正座する | 岩田 笑酔 | |
澄む川に心の憂さを笑われる | 上村 脩 | |
いい奴で心に濁りなどはない | 杉山 太郎 | |
献体と書く遺言へ空が澄み | 小倉 利江 |
『税』 堀井 勉選 | ||
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ご破算で年金からもむしる税 | 廣島 英一 | |
物納の土地が市民の森に化け | 堀江 加代 | |
税金をちゃんと払ってから言って | 斉藤 弘美 | |
稼ぐほど脱税したくなるらしい | 徳田 正幸 | |
金持ちになると税金出し渋る | 長谷川路水 | |
天引きにすれば税金よく落ちる | 藤本 幸雄 | |
脱税が申告漏れと変わる闇 | 篠崎 紀子 | |
税金にストローを差す天下り | 原 光生 |
『素朴』 竹本瓢太郎選 | ||
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のり弁へ昭和の味を染みこませ | 五十嵐淳隆 | |
冬至の日母はやっぱりカボチャ煮る | 近江あきら | |
里山に生きてブレない飯茶碗 | 荻原美和子 | |
妻だけを愛し男の第二章 | 永井 静佳 | |
我が儘な自給自足へ満たされる | 花井ようこ | |
ひらがなで書く母の字があたたかい | 木崎 栄昇 | |
無骨さが父の背中に貼ってある | 上田 健太 | |
終章は妻の手を取り懺悔する | 米島 暁子 |
『旅』 北山 蕗子選 | ||
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四コマの先は気楽な独り旅 | 五十嵐淳隆 | |
幻の地酒と出会う気まま旅 | いしがみ鉄 | |
パノラマの地図が呼んでる旅ごころ | 大戸 和興 | |
望郷の念やみ難い北帰行 | 増田 幸一 | |
山頭火真似て弊衣の旅しぐれ | 廣島 英一 | |
故郷へ心の鍵を開けに行く | 川名 信政 | |
海鳴りを終点で聴く北の旅 | 古市紗千子 | |
ローカルの旅円空に出逢う秋 | 松岡恵美子 |