花久忌(平成22年5月)
『旗』 川俣 秀夫選 | ||
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万国旗図鑑に載らぬ旗もある | 西潟賢一郎 | |
どん底で一旗揚げる策を練る | 亀井 哲 | |
漁夫の利へ反旗をたたむ馬の骨 | 上村 脩 | |
逆風に晒すと旗がしゃんとする | 上村 脩 | |
旗色を訊きに踏み絵がやってくる | 阿倍 勲 | |
戦など知らぬ園児の万国旗 | 野口 節子 | |
旗色のいいほうへ付く無重力 | 西潟賢一郎 | |
勝利者の旗に群がる氏素性 | 相良 博鳳 |
『慰める』 都倉 靖子選 | ||
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熱燗が明日を天気にしてくれる | 中島 宏孝 | |
寄せ書きの文字が励ます闘病記 | 西潟賢一郎 | |
ユーモアの魔術で癒す孫のキズ | 中島 一甫 | |
気遣って即かず離れず居てくれる | 刑部 仙太 | |
慰めの語彙屈辱の傷を舐め | 上田 健太 | |
失敗に触れずやる気を褒めてやり | 中西 隆雄 | |
説教の結び目に置く人情味 | 川俣 秀夫 | |
挫折した心のパズル埋める愛 | 廣島 英一 |
『曲折』 國嶋 武選 | ||
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百歳の顔に轍が刻まれる | 村田 倫也 | |
結局は鞘に納まるくされ縁 | 亀井 哲 | |
落日の驕り悔いてる今がある | 丸山しげる | |
棚を絶って家裁の判一つ | 伊藤 縁太 | |
左遷地へ靴もジグザグ描いている | 西潟賢一郎 | |
五里霧中直線のない地図を抱き | 西潟賢一郎 | |
和解するまでの苦労は語らない | 川俣 秀夫 | |
五線譜に右往左往の人生譜 | 相良 敬泉 |
『偶像』 いしがみ 鉄選 | ||
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キユーピー讃歌私もうじきママになる | 西潟賢一郎 | |
胸像と社訓が睨む社長室 | 亀井 哲 | |
社の飛躍そっと見守る像ひとつ | 生井 芳夫 | |
ビーナスの裸身に春が舞い降りる | 都倉 靖子 | |
御仏の慈悲唯物論も老い | 河合 成近 | |
おびんずるぐらいの神が丁度いい | 河合 成近 | |
偶像を砕き少年脱皮する | 篠田 東星 | |
公平に観音様が慈悲を垂れ | 新井 良夫 |
『刻む』 津田 暹選 | ||
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過ちを酒で刻んで酒で縫い | 篠崎 紀子 | |
生傷の絶えぬゴムの木かわいそう | 刑部 仙太 | |
息継ぎの隙間で喜劇組み立てる | 相良 敬泉 | |
シュレッダートヨタトヨタが騒がしい | 渡辺 梢 | |
脈拍のリズム確かな回復期 | 中西 隆雄 | |
うしろ指ボクが切り刻まれている | 西潟賢一郎 | |
負け犬の野望は鉈で切り刻む | 川俣 秀夫 | |
職人の鑿ナノテクを気にしない | 上村 脩 |