川柳文化祭誌上大会(平成20年)
『しぶしぶ』 田中八洲志選 | ||
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出しっぷり悪いお礼に有る余熱 | 亀井 哲 | |
年金の天引きよしと言ってない | 藤本 幸雄 | |
じゃんけんに負けてピエロに甘んじる | 齊藤由紀子 | |
ご先祖を人質にして寺の寄付 | 増田 幸一 | |
二次会へ顔をしかめるウーロン茶 | 小泉 正巳 | |
異分子が不満引きずる多数決 | 岩瀬 恵子 | |
本心の舌へ妥協が絡みつく | 久保田見乗 | |
花道にドンの未練が落ちている | 阿部 勲 |
『破る』 宇都 幸子選 | ||
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ジンクスを破った日からよく眠る | 五十嵐 修 | |
草の根のパワーが破る保守の壁 | 上村 脩 | |
名刺千切って定年の紙吹雪 | 荻原美和子 | |
公約の破片ばかりが吹き溜まる | 小倉 利江 | |
因習を破ると空が高くなる | 三輪美智子 | |
ドンファンの誓いひらひら風に舞い | 安藤 波瑠 | |
公約にスーダラ節が貼ってある | 齊藤由紀子 | |
張り詰めた空気を破る呱呱の声 | 小金沢綏子 |
『ゆったり』 渡辺 梢選 | ||
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ノープラン非日常です湯のけむり | 加賀谷三帆 | |
成る樣に成ると大樹が呼吸する | 北山 蕗子 | |
余命へのこだわり捨てたアンダンテ | 守屋不二夫 | |
マイペースの私を褒める含羞草 | 伊藤三十六 | |
老夫婦もう一周の観覧車 | 森 良子 | |
縫い代へ幅を持たせて同居する | 上田 健太 | |
ノミネートされ遅咲きが立ち上がる | 荻原美和子 | |
多数派の真ん中で聞くスロージャズ | 前田 星世 |
『ポスト』 坂野 照明選 | ||
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抜擢の椅子は孤独の背に寒い | 佐藤 晴江 | |
その椅子が座った木偶を踊らせる | 島津 富弥 | |
野心家が目論む不相応の地位 | 小林寿々夢 | |
人生のゴールポストに棲む魔物 | 丸森 太郎 | |
合格通知郵便受けを春にする | 田中 秀貴 | |
その椅子は甘いぞ蟻の列続く | 篠田 東星 | |
総理の座狙い撒き餌の値を上げる | 大野 征子 | |
澄んだ瞳を赤ちゃんポスト抱き止める | 小倉 利江 |
『役』 竹田 光柳選 | ||
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てにをはの一字が重い役を持ち | 森 昇 | |
断った役でライバル賞を取り | 上田 健太 | |
役職に就いて初心を巻き戻す | 花井ようこ | |
はじめての主役笑顔を崩せない | 内藤 房子 | |
世話役を受けて地域の水に溶け | 岡部 美雄 | |
器ではなかった役が板に付き | 佐藤権兵衛 | |
遠回りしてきた無駄が役に生き | 織田 順子 | |
大役を若い遣る気に賭けてみる | 宮内美の里 |
『値切る』 田中寿々夢選 | ||
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寝たきりの命が国に値切られる | 小泉 正巳 | |
赤札をハローワークがぶら下げる | 岡部 美雄 | |
値切らせはしない高齢者の誇り | 三輪美智子 | |
コスト割れまで孫請けを苛め抜く | 宮内みの里 | |
日本を値切る飽くなき食偽装 | 二宮 茂男 | |
道化師を値切ると喜劇まで痩せる | 西潟賢一郎 | |
団塊の首半額でつなぎ止め | 小泉 正巳 | |
豊作貧乏札束で叩かれる | 大野 征子 |