花久忌(平成21年5月)
『好き』 津田 暹選 | ||
---|---|---|
居酒屋の喧噪が好き煙が好き | 上田 健太 | |
イエスウイキャンカリスマが染める色 | 中島 一甫 | |
スマイルが好きでスマイル心掛け | 岡部 定雄 | |
ヒッチコック好きで疑い深くなる | 西潟賢一郎 | |
物好きでノーベル賞に辿り着く | 荻原美和子 | |
好きなだけ食べろと言ってくれた芋 | 松田 重信 | |
花畑アイラブユーが跳ねている | 西潟賢一郎 | |
酸欠の街に自己愛たむろする | 小金沢綏子 |
『おやおや』 安藤 波瑠選 | ||
---|---|---|
日本語の怪しい人で日本人 | 五十嵐 修 | |
儲け主義産地偽装が連鎖する | 小金沢綏子 | |
花嫁の道具にかくすブーメラン | 三浦 正明 | |
就活に負け婚活へダッシュする | 齊藤由紀子 | |
ケータイは私を探す迷子札 | 潮田 春雄 | |
双六の上がりを知らぬ天下り | 佐藤 美文 | |
顕示欲またワタクシを売りに来る | 齊藤由紀子 | |
気がつけば喜劇の主役だったボク | 五十嵐 修 |
『声』 五十嵐 修選 | ||
---|---|---|
難問は声なき声を聴けという | 渡辺 孝雄 | |
肉声が凍てつく北へ届かない | 荻原美和子 | |
モナリザはハスキーボイスかも知れぬ | 近江あきら | |
派遣社員が放つムンクの叫び声 | 宮内みの里 | |
移植待つ臓器届いた神の声 | 野口 節子 | |
母さんが喋ると天の声になる | 小金沢綏子 | |
駄菓子屋に昭和の声が谺する | 川俣 秀夫 | |
音域が合わないままに鶴と亀 | 渡辺 梢 |
『結ぶ』 花井 ようこ選 | ||
---|---|---|
慰謝料で結び目を解く赤い糸 | 阿部 勲 | |
帯きりりネオンの海で戦する | 大野 征子 | |
宿敵と契りを交わす水面下 | 及川竜太郎 | |
挙げかけて握ったコブシ弄ぶ | 松田 重信 | |
核で手を結び平和が築けない | 竹田 光柳 | |
塩むすび母の小言を噛み締める | 宮内みの里 | |
不器用な結び目嘘を嫌い抜く | 齊藤由紀子 | |
しあわせはまだ結び目に母がいる | 小金沢綏子 |
『明日』 篠田 東星選 | ||
---|---|---|
二万円ぽっちで明日は売りません | 中島 宏孝 | |
来る人が来て盛り上がる前夜祭 | 川俣 秀夫 | |
カリスマの舌が明日を弄ぶ | 中島 一甫 | |
介護する明日は我が身といい聞かせ | 米島 暁子 | |
屑篭に試行錯誤の明日がある | 野口 節子 | |
まっさらの明日に目鼻書いてみる | 菊池 可津 | |
正論を吐くと明日が逃げて行く | 小金沢綏子 | |
勝ち組みは明日の行進曲を聞く | 近江あきら |