川柳文化祭1部(平成30年11月)
『迎える』 齊藤由紀子選 | ||
---|---|---|
墓参り何時か来る日の土に触れ | 井上 東風 | |
ようこそ古希少し哀しいかな今日は | 稲沢ひろせ | |
てんこ盛りの複雑でくる消費税 | 渡辺 梢 | |
手不足へ間口拡げる多国籍 | 平蔵 柊 | |
シャンシャンが上野を人の山にする | 阿部 勲 | |
明日からは十八嫌だなあ大人 | 川口 雅生 | |
介護バス親も子も乗る長寿国 | 上野さざ音 | |
百歳のラインダンスがやってくる | 渡辺 梢 |
『巡る』 木崎 栄昇選 | ||
---|---|---|
寒風ももう次の芽が土を割り | 篠原 ゆみ | |
回り道して原点に辿り着き | 渋川 渓舟 | |
病院のハシゴで友が増えてくる | 堀井 勉 | |
やがて来る終活の日の息づかい | 上原 稔 | |
湯巡りで行きかう人があたたかい | 上村 脩 | |
人の世を巡って風は丸くなる | 芝田勘右衛門 | |
メビウスの帯徘徊を誘い込む | 三上 武彦 | |
寺巡り重ねた罪をざん悔する | 佐藤 鴻司 |
『模様』 加藤ゆみ子選 | ||
---|---|---|
赤と青ねじれ模様の星条旗 | 安西 建次 | |
唐草が世界へエコの手本見せ | 大竹 洋 | |
水玉のシーツで海と同化する | 荻原美和子 | |
縄編みのうねりに母の応援歌 | 岩田 康子 | |
老人には絣模様のハッシュタグ | 渡辺 梢 | |
風紋を砂丘に描く神の筆 | 篠田 東星 | |
異次元を草間彌生と浮遊する | 岩田 康子 | |
クッションを柿色に替え秋の部屋 | 小杉美智子 |
『柔らかい』 大野 征子選 | ||
---|---|---|
新人の鱗鋳型へ柔らかい | 小倉 利江 | |
もやしっ子マトリョーシカの中に棲む | 五十嵐淳隆 | |
やわらかな眉に満足する鏡 | 和泉あかり | |
やわやわと張れば切れない脳回路 | 五十嵐淳隆 | |
硬軟を手軽に捌くリトマス紙 | 廣島 英一 | |
ホスピスの会話オーラに包まれる | 竹田 光柳 | |
師の笑顔あとで漢方薬になる | 大竹 洋 | |
柔軟な思考回路にある多様 | 深堀 秀子 |
『揺れる』 黒崎 和夫選 | ||
---|---|---|
延命の拒否へ家族が揺れている | 平蔵 柊 | |
無い筈の遺産姉妹の血を揺らす | 織田 和子 | |
極刑へ裁判員にある躊躇 | 福井 勲 | |
大国の論理で揺れる世界地図 | 佐々木一彦 | |
新しい母に子どもが揺れ惑う | 織田 順子 | |
安楽死願って独楽が揺れはじめ | 河合 成近 | |
遺言の宛名へ語尾が揺れてくる | 渡辺 梢 | |
延命を拒否した後も揺れている | 大戸 和興 |
『余白』 中西 隆雄選 | ||
---|---|---|
虚実陰陽余白が語る水墨画 | 福井 勲 | |
百歳の余生まだまだ生きられる | 米島 暁子 | |
自分史の余白に埋める愛と罪 | 加藤 佳子 | |
エンディングノート余白は愛で埋め | 織田 順子 | |
年輪の余白を埋める老いの趣味 | 上田 健太 | |
百態を演じ余白の深呼吸 | 深堀 秀子 | |
枯渇する脳へ余白が重くなる | 芦田 鈴美 | |
未来図の余白に夢の種を蒔く | 渋川 渓舟 |
『 楽 』 山口 早苗選 | ||
---|---|---|
美女と野獣楽しく暮らすユートピア | 小林 洋子 | |
楽しみにしてると来ない詐欺電話 | 小菅 忠 | |
連れ合いを亡くした途端鬱が消え | 岡 遊希 | |
究極のゴール白寿で安楽死 | 栃原 輝昭 | |
文楽の人形どっこい生きている | 權守いくを | |
楽すると呆けると子供口揃え | 深川きんぎょ | |
楽な方楽な方へと風見鶏 | 深堀 秀子 | |
少子高齢左団扇が落ちてない | 小倉 利江 |
『力量』 西潟賢一郎選 | ||
---|---|---|
挑発に乗った未熟を自覚する | 米川あいこ | |
誕生の拳が天を突き上げる | 廣島 英一 | |
AIの便利人間反古にする | 篠原 ゆみ | |
能力に溺れ自分を見失う | 新井千恵子 | |
上司より部下に限界試される | 稲沢ひろせ | |
冴えているペンは皆んなに愛される | 木口 孝子 | |
父の声ここ一番が揺るぎ無い | 深堀 秀子 | |
母さんの十月十日に借りがある | 岩田 康子 |