川柳文化祭1部(令和5年11月)
『部屋』 上田 健太選 | ||
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私がわたしに返る小宇宙 | 新井千恵子 | |
大部屋の中に個性が埋もれる | 佐藤 孔亮 | |
断捨離が部屋の息吹を消していく | 髙橋 充 | |
相部屋で天下国家を論じ合い | 白子しげる | |
写経して心の部屋を広くする | 大野 征子 | |
主なき机に花束が揺れる | 落合 正子 | |
北向きの部屋で心を凍らせる | 上村 脩 | |
部屋毎をラインがつなぐ核家族 | 上村 脩 |
『抱負』 渋川 渓舟選 | ||
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どん底に落ちても夢を抱き続け | 竹田.光柳 | |
地に足が付いてる八起き目の抱負 | 織田 順子 | |
ペン先に歌わせている古希の夢 | 加藤ゆみ子 | |
努力家のいつかを語る目に炎 | 野口らいら | |
星雲の夢がさ迷う大都会 | 平蔵 柊 | |
これからの抱負下り坂を上る | 木戸香穂子 | |
あきらめの文字は載せない母の辞書 | 大野 征子 | |
伸び代へ明日の抱負をあふれさせ | 上村 脩 |
『巻く』 尾藤 川柳選 | ||
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糸を巻くワタシを見たいフェルメール | 相原あやめ | |
追想へダリの時計を巻き戻す | 上村 脩 | |
バンダナにはない鉢巻の必勝 | 佐道 正 | |
太巻きを切ると宇宙が顔を出す | 島田 駱舟 | |
遠巻きにされる昭和の理想郷 | 市川ハジメ | |
休日のネジは自分で巻いて出る | 安藤 紀楽 | |
べからずが絡まる父のあばら骨 | 山口 早苗 | |
鬼縛る縄で自分の罪を巻く | 大野 征子 |
『実る』 荻原 鹿声選 | ||
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生き抜いたシワに熟した人間味 | 大野 征子 | |
腎臓で育ったらしいオレの石 | 佐藤 孔亮 | |
国籍を変え才能が開花する | 齊藤由紀子 | |
フルムーンローンは少しあるけれど | 大竹 洋 | |
完熟の人生でしたデスマスク | 江畑 哲男 | |
快哉を叫ぼう満天の星に | 江畑 哲男 | |
その日へと美のつけ方を模索する | 加藤ゆみ子 | |
見送った後はワタシを実らせる | 大竹 洋 |
『向く』 木崎 栄昇選 | ||
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のんびり行こう涅槃へと向かう道 | 芦田 鈴美 | |
心地よい訛りだ里が近くなる | 芦田 鈴美 | |
向き合って夫婦は同じ景色見る | 佐藤 孔亮 | |
また一人送り振り向いては涙 | 栃原 輝昭 | |
風向きが変われば日和見が動く | 白子しげる | |
盤上の戦が礼を心得る | 齊藤由紀子 | |
喜も哀も仏と語る朝のお茶 | 齊藤由紀子 | |
小細工はない逆風へ対峙する | 上村 脩 |
『珍しい』 佐藤 美文選 | ||
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悪友と珍味肴に飲み明かす | 松原 幸子 | |
努力した孫の百点ありがとう | 関本 敬子 | |
折角の珍味へ蘊蓄が不味い | 齊藤由紀子 | |
変人と奇人以外とウマが合う | 上村 脩 | |
珍しいものが擽る所有欲 | 右田 俊郎 | |
例外はひとつあなたの美しさ | 相原あやめ | |
霜月に異例の暑さ熊が出る | 大矢 和子 | |
太陽と旅の途中に虹かかり | 闘 句朗 |
『貰う』 米島 暁子選 | ||
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押し入れで頂きものがふて寝する | 増田 幸一 | |
友達の笑顔サプリに成ってくれ | 津田 暹 | |
翔平と聡太笑顔をありがとう | 安井 修三 | |
A席で團十郎の気を貰い | 安藤 波瑠 | |
晩学の辞書から貰う未知の夢 | 齊藤由紀子 | |
欲しくないDNAも子は貰い | 松原 幸子 | |
結婚の指輪手錠と知らず受け | 竹田 光柳 | |
人生の秋にようやく陽を貰う | 五十嵐淳隆 |
『役』 中島 和子選 | ||
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何役もそつなくこなすカメレオン | 大矢 和子 | |
定年の夫の役はエキストラ | 野口らいら | |
大役が似合う笑顔は年の功 | 栃原 輝昭 | |
役柄を熟知貴重ないぶし銀 | 南川 哲夫 | |
国連の役目果たせぬ面構え | 森 沙恵子 | |
天使にもサタンにもなる介護役 | 竹田 光柳 | |
AIに机を譲る生き字引 | 矢嶋もと之 | |
役得に蛇の道がる永田町 | 齊藤由紀子 |