川柳文化祭1部(平成24年11月)
『音』 篠田 東星選 | ||
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人間を支配小癪な電子音 | 若月 葉 | |
支給日は行進曲に乗って来る | 米島 暁子 | |
芝刈り機隣の庭が唸り出し | 堀井 勉 | |
ほんとうの音が恋しい指話と指話 | 西潟賢一郎 | |
新聞の音読今日が立ち上がる | 井出ゆう子 | |
豊穣を喜び躍る笛太鼓 | 新井 良夫 | |
宿敵の羽音闘志に火をつける | 小金沢綏子 | |
バラバラの音符束ねるにぎり飯 | 荻原 鹿声 |
『ノー(NO)』 渡辺 梢選 | ||
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ノーメークここぞの時に立ち上がる | 永井 静佳 | |
延命は拒否天国で詩を読む | 津田 暹 | |
フクシマの牛はマイクに応えない | 荻原 鹿声 | |
割り切れぬ話キャベツを真っ二つ | 魚地 芳江 | |
ジンクスがよせと言うから行きません | 井出ゆう子 | |
本心はノーノーノーのイエスマン | 二宮 茂男 | |
病院を終の住処にさせません | 井出ゆう子 | |
原発を断つ赤ちゃんの足の裏 | 山口 早苗 |
『はかない』 五十嵐 修選 | ||
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表情のない顔顔のケアホーム | 若月 葉 | |
難病の子を助けられない無常 | いしがみ鉄 | |
人の世は無常の夢の走馬灯 | 懽守いくを | |
散る花に託す無言の相聞歌 | 新井千恵子 | |
真っ当に生きた柩が軽すぎる | 齊藤由紀子 | |
才能がはかなく散った無言劇 | 大戸 和興 | |
陽炎の向こうで幻想が揺れる | 北山 蕗子 | |
永遠の命などない曼珠沙華 | 國嶋 武 |
『秘密』 荻原美和子選 | ||
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繁栄の陰で過労死伏せられる | 中西 隆雄 | |
筋書きが狂い秘密が噴火する | 布施 ちえ | |
真相は誰にも話さないメタボ | 畑 多聞子 | |
ポケットの中で秘密が太りだす | 篠田 東星 | |
目配せが記憶回路を白にする | 堀井 勉 | |
法律に触れぬ微罪を抱いている | 木崎 栄昇 | |
耳打ちが仲間意識を強くする | 福士 哲夫 | |
モザイクの下で秘密が太りだす | 阿部 勲 |
『深い』 中西 隆雄選 | ||
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豊かさの中で迷路が深くなり | 井上 東風 | |
故郷の森に思考を積み上げる | 大河原信昭 | |
谷底に落とされ野望組み立てる | 篠崎 紀子 | |
リストラの深手は鬼の牙も抜き | 西潟賢一郎 | |
両陛下その眼差しが慈悲深い | 堀井 勉 | |
掛け違う釦に深くなる樹海 | 荻原 鹿声 | |
二極化の街で疑い深くなる | 上村 脩 | |
真実を彫る碑の深き文字 | 西潟賢一郎 |
『ペース』 中島 和子選 | ||
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リハビリの焦りはしないカタツムリ | 久郷せつ子 | |
褪せてきた仮面の修理忙しい | 近江あきら | |
お役所の文書に深い隠し味 | 横塚 隆志 | |
ペース守って適量の凪にいる | 荻原美和子 | |
恍惚の世話足踏みを許さない | 西潟賢一郎 | |
高齢化世帯冬支度が早い | 西潟賢一郎 | |
おもちゃ箱から兵隊が歩きだす | 佐藤 美文 | |
終の絵を飾る歩調を整える | 木崎 栄昇 |
『慕情』 竹本瓢太郎選 | ||
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ときめきが消えないうちに切符買う | 魚地 芳江 | |
残照が胸の慕情を掻き立てる | 宮内みの里 | |
再会へ断ち切った愛甦る | 堀江 加代 | |
残された妻の湯飲みで独り酌む | 長瀬 煕美 | |
更年期慕情のかけら突き刺さる | 徳永 妙子 | |
古タンス亡母の顔が甦る | 篠崎 紀子 | |
独り飲む酒が想いを膨らませ | 佐藤 孔亮 |
『守る』 清水 香代子選 | ||
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改革の不備突いてくる既得権 | 坂野 照明 | |
日本の農を守ってきた棚田 | 大戸 和興 | |
砂の城それでも死守のうさぎ小屋 | 若月 葉 | |
愛し子へ青い地球をガードする | 大野 征子 | |
貧しくも自分の色で旗立てる | 魚地 芳江 | |
原発へノー次世代の子の為に | 小倉 利江 | |
尖閣は固有領土と譲れない | 宮内みの里 | |
風雪に耐えて九条揺るぎ無い | 山田こいし |