川柳文化祭1部(令和3年11月)
『住む』 近江 あきら 選 | ||
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老いてなお一の虫胸に住む | 堀江 加代 | |
夢捨てぬ八十路の部屋に鯨の絵 | 渡辺 梢 | |
父さんが居ると風まで柔らかい | 米島 暁子 | |
丸く住む妻にはいつも耳を貸す | 駒木 香苑 | |
アッピール下手で二軍に住み馴れる | 五十嵐淳隆 | |
胸に住む鬼に怠惰を指摘され | 藤 あかね | |
波風を乗り越えてきた現在地 | 渋川 渓舟 | |
紙芝居抱いて童話の町に住む | 大野 征子 |
『正確』 芦田 鈴美 選 | ||
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四冠の読みAIの上を行く | 白子しげる | |
正確に刻む時計がもの足りぬ | 増田 幸一 | |
正確にそして無慈悲に誤爆する | 高橋 充 | |
稲を刈る父の狂わぬ腹時計 | 福井 勲 | |
アルバムに見事に飾る子の育ち | 渋川 渓舟 | |
狂わない時計でいつも遅刻する | 木崎 栄昇 | |
通勤の靴が知ってる時刻表 | 渋川 渓舟 | |
針の無い塔は揺るがず五百年 | 權守いくを |
『染める』 大竹 洋 選 | ||
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CMでラッピングする路線バス | 上田 健太 | |
玉虫に岸田カラーが褒められる | 河合 成近 | |
喝采の彩をフアンも身に纏い | 國嶋 武 | |
俺はクロ孫はチャ髪にする平和 | 小池 主計 | |
デジタルの海で揉まれるアナログ派 | 國嶋 武 | |
七変化させた男に骨がない | 新井千恵子 | |
何色に染まるか産声の未来 | 堀江 加代 | |
染められた男はきっと貝になる | 平井 熙 |
『頼る』 平蔵 柊 選 | ||
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無党派に頼ると風に流される | 佐道 正 | |
定石に頼ると敵に見抜かれる | 江崎 紫峰 | |
若者の善意に頼る献血車 | 五十嵐淳隆 | |
多国語に頼る介護と町工場 | 上村 脩 | |
暮しぶりまで診てくれる過疎の医者 | 岩田 康子 | |
消去法残る理解者妻となる | 小山しげ幸 | |
要介護人という字を深く知る | 森 沙恵子 | |
お日様があるからみんな生きている | 國嶋 武 |
『調和』 江畑 哲男 選 | ||
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抜け感がいいとダウンにはボーダー | 洲戸行々子 | |
北斎の浪には低い富士が合い | 五十嵐淳隆 | |
ユニクロとタッグを組んで庶民です | 齊藤由紀子 | |
釣り合いの取れぬ妻でも嫉妬する | 平井 熙 | |
小春日へふと口遊ぶ自由律 | 渡辺 梢 | |
お喋りが出来て家族になる家電 | 加藤ゆみ子 | |
親ガチャ子ガチャ諦めて仲が良い | 安藤 波瑠 | |
三密でほっとしている仲違い | 佐藤 鴻司 |
『尽くす』 荻原 美和子 選 | ||
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軽石が覆い尽くした美らの海 | 佐道 正 | |
私財まで注ぎ込んでいるボランティア | 堀井 勉 | |
心までドナーカードに書き加え | 上田 健太 | |
最期まで尽くす笑顔があたたかい | 上村 脩 | |
深すぎて尽くしきれない愛もある | 髙橋 和男 | |
沖縄に尽くしきれない恩がある | 山崎 修二 | |
国民のためだと公約の羅列 | 河合 成近 | |
真相を究め眠りを深くする | 北山 蕗子 |
『てきぱき』 中島 和子 選 | ||
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葬儀屋の一挙一動無駄がない | 堀江 加代 | |
根回しでシャンシャン総会が走る | 安藤 波瑠 | |
AIがあっさり捌く匠わざ | 南川 哲夫 | |
不始末を隠匿さすが手際よい | 栃原 輝昭 | |
株主の口に合理化煽られる | 横澤 七五 | |
段取りの良さに子連れのウエディング | 駒木 香苑 | |
復活へ積むシナリオに無駄がない | 上村 脩 | |
幕引きはタンゴの曲でゆくつもり | 渡辺 梢 |
『友』 西潟 賢一郎 選 | ||
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温かい余韻残して友帰る | 小保田千代 | |
公園デビューママ友の品定め | 大野 征子 | |
軸足をずらすと友が寄ってくる | 新井千恵子 | |
妻は戦友喜怒哀楽の坂を知る | 齊藤由紀子 | |
電子辞書撫でて博学友とする | 柳 るみ子 | |
親友が先に決めてた金屏風 | 米島 暁子 | |
歯にキヌを着せぬ同士で仲がいい | 國嶋 武 | |
風上にいて選り分ける友の数 | 上村 脩 |