川柳文化祭誌上大会(平成21年)
『あこがれ』 近江あきら選 | ||
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あこがれた札束毒が塗ってある | 米島 暁子 | |
あこがれの人をグラスへ遊ばせる | 井上 東風 | |
庭の木に止まってみたい篭の鳥 | 近藤 道子 | |
虹描いて描いて明日は獅子になる | 大野 征子 | |
夢は宇宙へあすなろの木が伸びる | 齊藤由紀子 | |
自画像の目玉にたぎる虹を描き | 清水香代子 | |
凱旋の夢ばかり見る白い旗 | 木崎 栄昇 | |
中流のその上覗く虫眼鏡 | 布佐 和子 |
『いきいき』 安藤 波瑠選 | ||
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首輪はずすと生きてくる影法師 | 西潟賢一郎 | |
晩学にまだまだ挑む山がある | 多良間典男 | |
ゆるきゃらがゆるりと町を輝かす | 渡辺 梢 | |
おおかたを生き返らせるゼニの音 | 伊藤 我流 | |
どの顔もみんな輝く祭り好き | 小西 章雄 | |
介護終え自分のために生き返る | 南川 哲夫 | |
カルチャーに追う青春の忘れ物 | 平田 耕一 | |
戦列を離れて人の顔になる | 上村 脩 |
『うきうき』 中西 隆雄選 | ||
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切り札を握って足が地に着かず | 宮本彩太郎 | |
初受賞讃辞が耳に届かない | 大河原信昭 | |
シナリオになかった恋がジャンプする | 北山 蕗子 | |
うれしくて一筆箋が良く喋る | 阿部 文彦 | |
昇進の目に青空が果てしない | 大野 征子 | |
パスワード変えて女は毬になる | 上村 脩 | |
初恋の鼓動フォルティッシモになる | 五十嵐 修 | |
ライバルを消すと消しゴムまで躍り | 西潟賢一郎 |
『笑顔』 清水 潮華選 | ||
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妥協するたびにひきつる笑い皺 | 小林 良恵 | |
清濁を飲んで笑顔を武器にする | 永井 静佳 | |
幸せな証誰にも笑みくばり | 小金沢綏子 | |
負けそうになると笑顔がカバーする | 柳 慶子 | |
どん底を抜けた笑顔を頼られる | 花道 歌子 | |
何もないせめて笑顔で迎えたい | 青柳 秋雄 | |
八起き目はきっと笑顔で立つだろう | 五十嵐 修 | |
満面の笑みもち帰る宇宙船 | 原 光生 |
『音楽』 篠崎 紀子選 | ||
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クラシック流す牛舎に乳満ちる | 篠田 東星 | |
愛憎の虚空で響く津軽三味 | 上村 脩 | |
昇進の靴は行進曲で来る | 大野 征子 | |
決勝の空ブラバンが火を付ける | 近藤 辰春 | |
義と情に生きて演歌を友とする | 岡部 美雄 | |
通りゃんせ鳴ると盲導犬が立つ | 五十嵐淳隆 | |
ドラムソロつづくリストラ後の音符 | 西潟賢一郎 | |
津軽三味吹雪の愚痴はこぼさない | 清水 潮華 |
『回転』 堀井 勉選 | ||
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デジタル化時計回りを死語にした | 野村 克巳 | |
エコ家電国が回転早めさせ | 宮内みの里 | |
いつまでも自転している独裁者 | 四分一周平 | |
メビウスの帯を禍福が駆け巡る | 上村 脩 | |
ミラーボールに人間が剥がされる | 田中寿々夢 | |
子が乗ると回転木馬空を飛ぶ | 瀧 正治 | |
好きなことフル回転の脳になる | 小金沢綏子 | |
大宇宙回転軸は俺の指 | 落合広太郎 |
『記念』 中島 和子選 | ||
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記念にも証拠にもなる古写真 | 武田 正子 | |
応接間カップに栄華語らせる | 清水 潮華 | |
記念日を素通りそこからも夫婦 | 久保田見乗 | |
記念日の趣旨は知らない行楽地 | 阿部 勲 | |
反骨の勲章となる向こう傷 | 上村 脩 | |
外国の名所に恥を書いてくる | 京増 京介 | |
リゾートの隅にひっそり開拓碑 | 黒崎 和夫 | |
方言を持って帰った箸袋 | 篠田 東星 |