川柳文化祭1部(平成25年11月)
『道』 津田 暹選 | ||
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手探りの獣道ゆく防護服 | 宮内みの里 | |
坂道になると絆が生きてくる | 黒崎 和夫 | |
産道で先ず気にかかる金のこと | 伊藤三十六 | |
誤作動はなかった母の道標 | 植木 紀子 | |
我が道を行くデジタルに切り替えて | 河合 成近 | |
道がある限り二本の足で立つ | 北山 蕗子 | |
平凡な道でよかった鰯雲 | 潮田 春雄 | |
戻れない道だと知らぬ呱呱の声 | 國嶋 武 |
『ムード』 米島 暁子選 | ||
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紹興酒チャイナドレスの媚びに酔い | 西潟賢一郎佳 | |
観覧車上り切ったらプロポーズ | 佐道 正 | |
蝶になる少女華やぐネオン街 | 榊原 南山 | |
秋晴れにそそのかされたスニーカー | 木口 孝子 | |
見詰め合う二人に溶ける角砂糖 | 篠田 東星 | |
保護色のあなたに染まる安堵感 | 木崎 栄昇 | |
飲めないがムードで受けたナポレオン | 三浦 武也 | |
バラの風呂私を姫にしてくれる | 齊藤由紀子 |
『迷惑』 大野 征子選 | ||
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容赦ないスパムメールの山退治 | 木口 孝子 | |
放射能洩れに歳時記くずされる | 米島 暁子 | |
約束を破った毬がよく弾む | 篠崎 紀子 | |
隣国の詭弁誤解の多色刷り | 廣島 英一 | |
ユーデルを音痴のノドがかき回し | 西潟賢一郎 | |
看板のお辞儀が詫びる工事中 | 佐藤 晴江 | |
風評に網をたたんだままの漁夫 | 田中寿々夢 | |
絶対を吐く子理屈ひとつ無視を決め | 生井 芳夫 |
『森』 秋山 茂子選 | ||
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七人の敵など居ない母の森 | 永井 静佳 | |
思いやり予算が森を基地に変え | 小金沢綏子 | |
チェーンソー野鳥の森は不眠症 | 井上 東風 | |
森になる夢は捨てないこ零れ種 | 小倉 利江 | |
決断へ迷いの森を駆け抜ける | 上村 脩 | |
古代史のDNAが森にある | 落合 正子 | |
森という酸素ボンベを抱く地球 | 三上 武彦 | |
手付かずの森に神代の風が吹く | 上村 脩 |
『やせ我慢』 花道 歌子選 | ||
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左遷地でパイオニアだと言い聞かす | 野口 節子 | |
泥舟を漕ぐ毎日へすまし顔 | 永井 静佳 | |
イエスマン感情線を押し殺す | 宮内みの里 | |
腹の虫押さえピエロを演じてる | 廣島 英一 | |
善人にされて蓋する自尊心 | 井上 東風 | |
飛び出した故郷にだけは泣きつかぬ | 徳田 正幸 | |
聖人の衣が重い肩の凝り | 織田 順子 | |
一語呑む喉に沽券が絡みつく | 田中寿々夢 |
『指』 田中寿々夢選 | ||
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ごつい指だれにも恥じる事はない | 堀井 勉 | |
火の匂い追う勝負師の冷えた指 | 齊藤由紀子 | |
少年の十指日本の明日を編む | 宮内みの里 | |
愛憎の記憶で疼く薬指 | 上村 脩 | |
朴訥に生きた居職の指の胼胝 | 上田 健太 | |
頼りない草食系の細い指 | 小山しげ幸 | |
指輪外してやっと抜け出す冬の景 | 齊藤由紀子 | |
ドングリの運弄ぶ覇者の指 | 上村 脩 |
『酔う』 堀井 勉選 | ||
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もう一本キミが小町に見えてきた | 大竹 洋 | |
発泡酒少し安めの酔い心地 | 田中寿々夢 | |
菊の香に酔い酒に酔う文化の日 | 斎藤 弘美 | |
異状気象地球も酔っているらしい | 大戸 和興 | |
じんとくるスピーチに酔う返り咲き | 荻原美和子 | |
ルーブルを溜息だけで見て回る | 福士 哲夫 | |
百薬の長の困った副作用 | 河合 成近 | |
優勝の美酒へグラスの底が抜け | 石川とく江 |
『らくらく』 和泉あかり選 | ||
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左遷地で師範になった安来節 | 二宮 茂男 | |
帰国子女LとRを喋り分け | 五十嵐淳隆 | |
歯車に一枚かんでらくをする | 篠崎 紀子 | |
内申書だけで付属を駆け上がり | 荻原美和子 | |
前屈は負けぬお辞儀で食っている | 児玉 寿子 | |
学卒を刷り増す甘いトコロテン | 原 光生 | |
ハッカーのネットに自動ドアがある | 宮内みの里 | |
肩書が付き風に乗り雲に乗り | 小金沢綏子 |